タイで英語は通じるの？バンコクで使われている公用語やタイ人の英語力を解説

黒田莉々 英語研究家 / 翻訳家

三度のご飯の次に英語が大好きな「英語の人」。英文法や英文解釈が大好物。洋書や洋画が大好きで、そこから学んだ「使える英語フレーズ」は数知れず。
米国東部の四年制大学（社会学/文化人類学専攻）をCum Laudeで卒業。帰国後は大手英会話学校の専任講師を経て、大学レベルの英語講師を20年近く経験。

現在、フリーランスで著述業、通訳、翻訳業を営む。集英社よりビジネス英語の指南書「悪魔の英語術」を出版。TOEIC975点、英検１級

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東南アジアの国々は、それぞれ個性があります。今回は「タイ」という国に注目します。

タイでは、英語は通じるのでしょうか？　そのほかにも、海外旅行先としても人気のある東南アジアの国「タイ」に関する様々な英語関連の情報を解説します。
国旗や公用語など「タイ」の基本情報や首都の正式な英語表記、タイ人の話す英語の特徴についても知っておきましょう。

「公用語」とは、ある国において公の場で共通語として使われることを認められている言語のことです。
公の場とは、行政などの公的機関や教育機関、裁判所などの司法機関、国際的な組織などを指します。
国の共通語として認められる「公用語」は、一つだけとは限りません。

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「タイ」はどんな国？

「タイ」は東南アジアのインドシナ半島に位置する国です。
カンボジア、ラオス、ミャンマー、マレーシアの4つの国と国境を接しています。
タイの首都は「バンコク」で、流通している通貨は「Baht（バーツ）」です。

タイの国旗は、横帯のような5本の線で構成されており、線の色は上から赤、白、青、白、赤の順です。
真ん中の太く青い線は国王を、その上下の白線は宗教を、一番外側の赤線は国民や国家を象徴しています。

タイに住む人々のほとんどは「タイ族」と呼ばれる民族です。
その他、中華系やマレー系なども住んでいます。
タイ人の信仰する宗教は仏教が最も多く、マレー系の人々が多く住む南部では一部イスラム教も信仰されています。
また、北部の山岳地帯には少数民族も住んでおり、それぞれ独自の文化と言語を受け継いでいます。

タイでは仏教徒が非常に多いため、現世で「徳を積む」つまり「良い行いを重ねる」ことが来世の幸せに影響を与えるという信仰が強いです。
そうした理由もあり、タイには大らかで穏やかな人や親切に人を助けようとする人が多い傾向が見られます。

「タイ」を英語で言うと「Kingdom of Thailand」

「タイ」の英語での正式名称は「Kingdom of Thailand」です。
省略して「Thailand」とも呼ばれます。
正式名称に「kingdom」と付いていることからわかるように、国王を国家の代表に据えた立憲君主制です。

タイは、日本語でも、正式には「タイ王国」です。

タイの首都「バンコク」は、英語で言うと「Bangkok」または「Krung Thep Maha Nakhon」です。
「Krung Thep Maha Nakhon」は、カタカナで表現すると「クルンテープ・マハナコン」と読みます。
首都に続く大都市や観光地である「チェンマイ」「プーケット」「アユタヤ」は、それぞれ「Chiang Mai」「Phuket」「Ayutthaya」です。

例文：I plan to spend a week in Thailand with my family on my next long vacation.
意味：次の長期休暇では、家族でタイに1週間滞在するつもりなんだ。

例文：I visited the World Heritage Site of Ayutthaya and the temples of Bangkok.
意味：世界遺産のアユタヤ遺跡とバンコクの寺院に行ってきました。

首都の英語での正式な表記は、2022年にタイ政府によって「Bangkok」から「Krung Thep Maha Nakhon」へ変更されました。
しかし、タイ政府が以降も「Bangkok」の表記を使用できるという方針を発表したため、現在2つの表記が混在しています。

タイの公用語は？

タイで使われている公用語は、「タイ語」一つだけです。
「タイ語」は、英語では「Thai」と呼びます。　ちなみに、「タイ人」も英語では「Thai」です。

首都バンコクでは、タイ語の標準語である「中央タイ語」が話されています。
他に、北部では「チェンマイ語（北タイ語）」、東北部では「イサーン語」などがタイ語の方言として使われます。

タイ語は中国語と同じ声調言語に分類され、基本的に5種類の声調で成り立っています。
声調言語とは、同じ音でも音の高低のパターンの違いによって語の意味が変わる言語のことです。
また、タイ語では「タイ文字」という独特で複雑な文字が使われるという特徴もあります。

タイ語は習得が難しい言語の一つですが、発音や文字が難しい分、文法は比較的簡単です。
例えば、タイ語の文の語順は英語と同じく「SVO（主語＋動詞＋目的語）」で構成されています。

「Thai」という単語は、英語では、「タイ語」や「タイ人」を指す以外にも、「タイの～」という形容詞として使われます。
「Japanese（日本語、日本人。日本の） 」、「English（英語、英国人、イギリスの）」、「American（アメリカ人、アメリカの）」、「German（ドイツ語、ドイツ人、ドイツの）」などと同様の言葉です。

タイのバンコクで英語は通じる？

公用語には定められていなくても、タイでは英語も通じるのでしょうか？

タイの首都であるバンコクでは、空港や鉄道、観光地、ホテルのカウンターなどでは英語も比較的通じる場所が多いです。
また、これらの場所には英語表記の看板も設置してあります。

タイでは小学校から必修科目として英語教育が始まります。
しかし、一般のタイ人で英語を流暢に話す人はほとんどいないというのが実情です。
タクシー運転手やバスの車掌なども含め、一般のタイ人と英語でコミュニケーションを取ることは難しいでしょう。
バンコクの他には、大きな都市であるチェンマイやプーケットなどでも似たような状況です。

タイ人の英語能力

英語圏ではない国や地域における英語能力を調べた「EF EPI」という調査があります。
2023年の調査報告によると、113の国や地域の中でタイは「Very low proficiency（非常に低い英語能力）」の部類に入る101位でした。

日本は「Low Proficiency（低い英語能力）」の部類に入る87位なので、日本と比べてタイの方がやや英語が通じにくいと考えられます。
（引用元：世界最大の英語能力指数 ランキング）

タイ人が使う英語の特徴は？

タイ人の話す英語のイントネーションは独特と言われます。
母国語であるタイ語の影響によって、英語の発音に独自の訛りが出てしまうのです。

例えば、英単語の語尾を発音しなかったり最後の音節の部分にアクセントを置いたりすることがよくあります。
また、「V」「Z」などタイ語に無い音が抜けたり他の音で発音されたり、二重子音で始まる単語では2つ目の「l」や「r」が発音されないという傾向もあります。
「shampoo」や「wash」など、日本語で言う拗音（シャ、シュ、ショなど）が入った単語も苦手です。

タイ語は、タイ人の話す英語の文法に対しても影響を及ぼしています。
タイ語には時制の区別が無いため、過去形・未来形など時制を表現する単語はよく省略されてしまいます。
また、タイ語の丁寧語である「カー」などをつい語尾に付けてしまうことも多いです。

英語が公用語になっている東南アジアの国は？

東南アジアの中で英語を公用語としている代表的な国はフィリピンです。
アメリカの植民地だったことがあるため、ほとんどのフィリピン人は英語を流暢に話します。

また、シンガポールも公用語の一つに英語を含めている国です。
マレー系や中国系、インド系など様々な民族で構成され、多くの外国人も集まるため、日常的なコミュニケーションは基本的に英語で行われます。

まとめ

今回は、「タイ」で英語が通じる場所や一般のタイ人の英語力について紹介しました。
「タイ」では英語が公用語ではなく、英語が話せるタイ人でも独特なイントネーションを持っていることが多いです。
旅行や出張の際にはこうした点を踏まえて、滞在先を選んだり対策を立てたりすることが必要になるでしょう。